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苔庭に付いて。「苔庭っていいねー」が増えてます。

そんな訳で自力で苔庭を作るコツを経験からお話しします。


まずは、苔って何者なの?

植物です。植物ですから光合成をします。光合成には日照が必要です。そして、水が必要です植物なんで。苔が緑なのは植物ですから葉緑素があるからで、大きな樹木も小さな苔も基本の作りは同じです。

基本の作りは同じでも、決定的な違いがある。

当たり前ですが、一般的な植物は地中の根から水分を得ています。しかし、苔の根は、水分の補給はせず自立が目的なんだそうです。では、どこから水を得ているのか、葉や仮根と言う茎にある綿毛状の器官らしいです。と言う事は水分補給は地中では無く、土から上の地上だと言う事です。

例えば、土はカラカラの乾燥状態だとして、葉だけに霧吹きで水を与えれば水分補給ができるので枯れないと言う意味です。しかし、葉に付いた小さな水滴は、僅かな風や日光で直ぐに乾燥してしまいます。この時、土も湿っていれば、そこから水蒸気が上がります。この僅かな水蒸気の水分が、苔に水を与えた事になる訳ですから、ここが決定的な違いです。

北海道では苔庭が難しいと言われている訳。

なぜ難しいのか。空気が乾燥しているからです。本州に比べ湿度が低いからです。 カラット晴れた日が多い地域では、空気中の湿度(水分)から水を得ている苔にとって砂漠な訳です。 ここを判ってもらわないと、読み進んでも意味不明な事になります。

よし、苔の生態は理解したので苔選びです。

苔って数千種類あるらしいです。その中から選ぶ条件は、庭ですから観賞して綺麗でなければなりまん。それと、カラット晴れ地域でも育たなければダメですね。それと入手しやすい種類です。

そうなると庭に使う苔はたったの数種類です。ここでの紹介は3種類です。と言うのは、3種類しか経験が無いからです。だけど、この3種類で良い感じの苔庭が造れます。

それは、スナ苔、杉苔、シッポ苔です。

観賞するので、それぞれの見た目が大事です。

スナ苔です。
やや艶の無いシブーイ感じ、そして背丈が低いので密に揃うと絨毯の用です。そして張る場所によって黄緑から濃い緑まで色味が変わってきます。乾燥状態では、一本一本が葉を閉じて細くなるので苔の間に隙間が出来てしまいます。更に艶も消えます。苔のシットリ感の綺麗なイメージから離れていきます。但し、一旦水が当たると数秒で葉が開きシブーイ艶の絨毯に変化します。

杉苔です。
数種類ありますが、ここでは一般的な庭に使うオオスギゴケです。いかにも苔と言う感じです。色、艶、モコモコ感、全て苔のイメージです。色も確かにモスグリーンです。乾燥時は、それぞれ葉を閉じて細くなります。杉苔は葉先だけが緑で、それ以外は茶色なので、艶が消え根元の茶色が目立ちます。

シッポ苔です。
緑の絨毯と言うより、ビロードの生地と言う感じです。シッポ苔にも種類が有り、シッポ苔科のシッポ苔、カモジ苔、オオシッポ苔が一般的です。この当たりの苔は生産者でも区別されずに出回っている様です。私も区別するのに図鑑と、にらめっこです。まあ、管理は変わりませんのでシッポ苔と省略します。乾燥時は若干艶が薄れますが緑の濃さは、あまり変わりません。葉もあまり閉じないので見た目の変化では乾燥を気付かない程です。

苔庭の見本園

それぞれの苔の見た目の特徴は、文章では伝えきれないので、庭木流通センターに、この三種類の苔を張った見本園を作りましたので、是非お越し頂いて確認して下さい。

苔を張ろうとする場所の確認が必要です。

日の当たる場所。半日しか当たらない場所。ずーっと暗い場所。風が通る場所。風がよどむ場所。いつも土がカラカラ。いつも土がジメジメ。

などなど観察が必用です。そして、観察の結果どの苔がその場所に合っているのか選定が大事です。

更に苔に合わせて環境を変える事も検討します。日陰を作るには、庭の南にマンションを建てたり塀を作る。日向を作るには、南側のマンションを買い取って解体する。苔庭の為に。

少し真面目に戻ります。

日当たりが良く、風も通る(風による苔の乾燥)場所は、砂苔が適しています。近年、屋上緑化や壁面緑化に使用される程、日照と乾燥に強い苔です。ですから暗い場所、水の捌けが悪い場所などは、砂苔が黄変したり黒ずんだりして衰弱し育ちません。

砂苔と似た環境で杉苔も育ちますが、屋上緑化などでは条件が厳しすぎます。庭に張る場合は数日続く雨や霧などで蒸れやカビが発生しやすいので、それなりの管理が必要です。

もともと大型の杉苔は条件が良いと他の苔より背丈の伸びが早いので数年で15cm程になってしまいます。しかし、良く育つので喜んでいる場合ではありません。背が伸びると苔と苔の間に隙間が出たり、倒れたりします。

この状態は僅かな乾燥にもダメージを受ける状態です。勝手に伸びて勝手に枯れかかる、これが杉苔です。

この状態(どう見ても枯れてきている)の時でも、杉苔の根は生きています。世代更新の為に「苔を刈り込め」と言われていますが空っ風の札幌では、これが難しい訳です。刈り取られると地表面剥き出しの土が乾燥してしまうからです。よほど上手に管理しないと根から次の苔が出てきません。

札幌では芽を出すのに3年程度かかります。3年間カッコ悪くて観賞に耐えません。本来「苔を刈り込め」と言うのは自然に生えた場所の事。自然に生えたんだから刈り込んでも自然に生える、と言う事です。

では、札幌ではどうするのか。

杉苔が伸び、苔の密度が以前より開いてきたら、苔の間に「杉苔の種」を苔の根元に埋め込んでやります。苔の隙間の種は薄暗く湿度のある状態にいますので、数ヶ月で芽を出してきます。

隙間に蒔いた種が数センチに伸びたら、古い苔を刈り込んでも土が剥き出しになりませんので、古い苔の根からも新しい苔が芽を出します。こうやって世代交代させるのが良いと思います。この方法でも数年間は見苦しい状態となります。

先程、出てきた「苔の種」と言っても草花や樹木の「種」とは全く違う物で、一般的に想像する植物の種ではありません。苔そのものを粉砕した物です。ネットで「苔の種」で検索するとたくさん出てくるので簡単に手に入ります。

もちろん、自分で「種」を作ることも簡単にできます。調べてみて下さい。作り方を説明したサイトがたくさん有ります。

砂苔に戻りますが「砂苔は勝手に伸びて勝手に倒れて枯れる」と言う事は無いようです。そもそも背丈が5センチ程度しか伸びません。

人工的な散水もほぼ必要ありません。自然と増えた砂苔を観察していると数十年、変化無しのそのままです。又、風通しの良い場所でも平気です。結果、日向に向くのは砂苔です。

さて日陰では、シッポ苔が向いています。適度な湿度、適度な日照があれば綺麗に育ち、それを保ちます。半日陰程度であれば、やや色艶は悪いですが、人工的な水分管理で育つようです。

適度な湿度とは、ジメジメ環境ではありません。風による乾燥が少ないと言う事です。いくら日陰でも、風通しの良い場所は、綺麗な色艶が望めません。日陰から半日陰で常時吹く風を防げれば、なんとも綺麗な苔の絨毯が楽しめます。

そして、苔を張った後の管理です。

どの苔もそうですが、水の与えすぎは苔にとって致命傷となります。特に炎天下の水遣りは苔が蒸れたり葉焼けを起こしたりで数日で枯れる事があります。

苔は日中の日差しの中では、葉を細めて太陽光から身を守っている状態です。その状態の時に散水されると自ずと葉を開いてしまいます。この時、必要以上に太陽光を浴びてしまい葉焼けの状態となるようです。更に気温が高ければ、蒸れてしまい枯れる事が有るんです。

ではどのように水分管理すれば良いのか。

自然の状態では夜露や朝露が、そして空気中の湿度が苔の水分補給タイムのようです。当然、雨もそうです。夜露・朝露は太陽ギラギラの日中ではありませんし、雨降りは太陽が隠れているはずです。そして北海道は空気が乾燥しています。

庭に朝晩、露が降りる。空気中の湿度もいい感じ。こんな自然条件は都会では無理なのです。だから、人工的な朝露・夜露のような水分管理をすればいいことになります。

朝とは早朝です。

当社で苔庭を造った施主に「朝や夕方に散水して下さい」と説明すると大きな誤解があるようです。私としては「朝か夕方」と言うのは、日中の太陽を避けると言う意味なのですが、「朝」の曖昧さに問題があるようです。

「夕方」は、まあ殆どの施主が日が落ちた頃の夕方をイメージしますが、「朝」が問題です。「朝」を午前中とイメージして誤解されてしまいます。

苔に取っての「朝」は、日の出前後の早朝な訳です。この早朝に自然界では朝露が降りてきます。のんびり朝飯食って午前中の9時や10時に散水されると、既に日は高いですから苔にとっては昼と同じなので、たまった物ではありません。

と言う事で早朝が苦手な方は夕方をお奨めします。とにかく晴れた日の日中は、そーっとしておく事が大事なんです。

苔に人工的に水を与える頻度。

これが一番難しい。先にもありましたが砂苔は数ヶ月の乾燥に耐えます。但し施工後の暫くは散水します。全くの乾燥状態では仮死状態ですから、その環境に馴染むことも出来ません。活着を促す程度の散水をします。他の苔も、やや乾燥気味に管理する方が活着は遅いですが、枯らしてしまう事は軽減出来ます。

で、頻度は。

その季節や天候、場所により適宜、自分で判断する。全くもって無責任ですが、説明があまりにも難しいので、ここは非難を覚悟で逃げてしまいます。

よし、なーんとなく判ったから苔を張ってみようか。

その前に苔の選び方ですが、ここは種類の話ではありません。張る苔が天然物なのか、育生物なのかです。

自然に生えていた苔を自分で採取して張る、当然これは天然物です。あるいはネットで苔を買い物する訳ですが、そこでチョット注意が必要です。 販売されている苔が天然か育生物かです。

又、販売されている苔は、ほぼ本州の販売店です。販売店によっては「天然」とか「育苗物」とか、判断出来る言葉が書いてあります。

で、何が問題か。

天然物は、その苔が自生していた環境に近い状態にしなければ、生育が難しのです。それは、一日の日照時間や明るさ、朝昼晩の空中湿度、土の湿度、気温などです。これは、一般家庭で再現するのは非常に難しいことです。ましてやここは札幌ですから空気の乾燥が激しいのです。

本州の森の中の環境を札幌で再現するのは無理と言うことです。苔盆栽とか苔テラリュームとか苔玉とか庭のほんの一角とか、管理しやすい少量の苔であれば天然物は種類も豊富にあるので色んな色や形を選べます。

そこで、庭に張るのであれば、育生物がお奨めです。

育生物とは、先にも書いた「苔の種」を育苗トレーや畑に蒔いて人工的に育てたものです。これは湿度や遮光の調整などを人工的に管理して育てた物です。見た目も天然物に比べて、密度も有り、厚さも均一で、色艶も綺麗です。大事なのは天然に比べ育生物の方が庭に張ったとき枯れないと言うことです。

当社でも種からの栽培をしていますが、まあーこれが過保護に育てています。遮光ネットを掛けて太陽光を調整し、風に当たらないよう防風をし、乾燥しないように頻繁に散水して大事に育てるわけです。要するに苔が良く育つ条件を人工的に満たしてあげるのです。確かに育苗トレーの中で綺麗に生え揃います。

しかし、何故か納得できない。

先にも書いた天然物より遙かに良い条件で育てているのに、どうして条件の悪い庭で枯れないのか。どうして急な環境変化に耐えているのか。学者じゃないので本当のことは判りませんので予想の話をします。

天然苔と育生苔の違いは何か。予想ですけど。

天然苔は胞子で増えます。胞子は極々小さい物で風により何処へでも飛んで行くそうです。その後、何処かに舞い降りて、その場所が偶然、苔に取って好条件であれば、間もなく原糸体(ネットで調べてね)という形を経て発芽し苔らしい形になり、やがてコロニー(小さな群落)になる。条件が悪ければ何年も胞子のままジット待っている。

例えば、数日雨が降った後に土がうっすらと緑色になる(緑色の粉を振りまいたような状態)を見かけませんか。この状態が原糸体です。しかし、土が乾くと間もなく消えてしまいます。これは、そこに胞子が有ったからで、発芽の条件をジット待っていたためです。胞子で増えることを「有性生殖」(ネットで調べてね)と言うようです。

対して、育生物は苔そのものを粉砕して、育てたい場所にばらまく訳です。例えば、一本の3cmに伸びた苔が有るとします。これを三等分にカットします。それを土の上で寝かせて(倒して)おきます。日陰に置きます。適度な水分を保ちます。風で吹っ飛ばされないようにします。すると一本の苔から数本の苔が立ち上がってきます。

数本を三本と仮定して、三本寝かせていたので9本になります。一本が9本に増えた事になります。これを「無性生殖」(ネットで調べてね)と言うようです。この時、原糸体と言う過程を経ないで苔が増えた事になります。

植木栽培で言うと小さな種を埋めて発芽を待つか、50cmも有る木の枝を挿し木して根を出させるのかと似ています。こちらも挿し木の方が移植後の活着率は高いのです。

結論は、育生物が丈夫。

経験と予想により、育生物がお奨めです。販売店によって「育苗」・「育てた」・「栽培」など言葉が違います。チエック項目です。又、「育て方」・「施工の仕方」なども親切に載っていますが、あまり北海道向きな内容とは思えません。

ネット検索も、ここで私が書いた内容も、参考程度にして頂き、施工する場所に合わせて四苦八苦して下さい。

それで、土は何が良いの。

普通に水が捌ける普通の土でいけます。火山灰もいけます。砂地の土もいけます。但し、粘土に直接、苔を張るのはダメですね。少し土を盛るとか、更に起伏を付けて水を常に溜まらない状態にするとか工夫が必要です。

苔に肥料(化成肥料・有機肥料)は撒かないで下さい、一発で枯れます。(経験あり)土は粘土以外そんなに気にしません。

それより雑草対策です。

雑草だらけの場所に土をサット被せて苔を張る。何て言うのはマズイです。苔を張る前に雑草を退治します。しかし、この雑草対策が大変なんです。種で増える雑草と根で増える雑草と別けて対処しないと上手く対処できません。

種の場合は、ある程度の厚さで土を被せる又は入れ替えることで発芽を抑制できます。地表から何センチ埋まれば発芽しないかは種類によって違うので何ともですが、経験では5-20cm位でしょう。

例えば、いつも綺麗に雑草を抜いている場所でも、土を掘り起こすと、そこだけ雑草が生えてくる。これは深く埋まっていた種が、ちょうど良い深さに出てきた為、発芽する訳です。厄介です。

根で増える雑草はもっと厄介です。例えば、スギナです。当社でも「スギナを無くしたいから土を入れ替えてほしい」と言う依頼が有るほどです。経験ではスギナに1メートルの土を被せても数年後にはスギナが出てきます。土を厚く被せても絶えないと言う事です。

じゃあ、どうすんのです。

除草剤があります。あくまでも苔を張る前の処理です。根まで枯らすタイプの除草剤で根まで枯らせば、もう出てこないでしょ。と言う事です。

だけど出てくるんですねー。例えば種には効かないようなので発芽します。スギナの根も地中深くまで全て枯れる事は期待できません。

このタイプの除草剤は、その成分を葉に噴霧して葉から吸収させ根まで枯らすと言う工程です。例えば、葉を刈り取った後の根だけが地中にある・春先で葉がまだ出ていない時期のスギナなどには効果が無いと言うことです。

葉を出させて除草、また葉を出させて除草を繰り返す必要があります。思った以上に時間が掛かります。

違うタイプの除草剤も有ります。土にばらまいて土にその成分を染みこませ地中の根から成分を吸わせるタイプです。除草剤としては強力です。非農耕地用、などと箱に書いてあるタイプです。植物を植える場所では使用できませんとなってるので、当然、苔も張れません。

除草剤は種類が多いので、これがお奨めと言うのは難しい訳です。商品名も書いて良いものなのか。

参考までに、葉から吸収させるタイプで、土に触れると除草成分が消えます。と言う商品は「グリホサート系・除草剤」なんて検索で出てきます。良く調べてから雑草対策をして下さい。

まとめ。

それぞれの苔の好む環境を知る。

水を葉から吸収するので空気中の湿度が重要。

その為に風を防ぐ工夫が必要。

土は一般的な土で良い。

育生物が丈夫で扱いやすい。

水を与え過ぎない。

数週間、乾いていても苔は枯れない。

日照りの最中は水は禁物。

肥料は禁物。

事前の雑草対策。